アダンソンハエトリ
記念すべき先頭打者は、写真でもトップを飾っているアダンソンハエトリ(学名:Hasarius adansoni)です。
アダンソンハエトリはその名の通りハエトリグモ科の節足動物ですから、厳密には昆虫ではありません。しかし、人間にきわめて密接に関わりながら生活しているため、我々が実際に目にする機会が非常に多くあります。
また、その外見も愛らしく(意見は分かれるでしょうが、私は非常に愛らしいと思います)、「他のどんな昆虫や節足動物もだめだけど、アダンソンだけは例外!」という人も多く見かけます。
おそらく、新築の家やマンションに一番最初に訪れる最初の昆虫は、ハエ類などの住民としてはあまり歓迎したくない虫たちでしょう。その虫たちを餌としている彼らは、実に頼もしい益虫なのです。
加えて、彼らのもう1つの特徴として徘徊性のクモですので、巣を作ってそこに埃がたまることによって部屋が汚く見えたり、人間に網が触れて不快な思いをさせたりということがありません。
ただ時々部屋の隅から顔を出して、人間に嫌われている昆虫たちを慎ましやかに食べているのです。
アダンソンハエトリが人気がある理由としては、単に益虫であるということだけではなく、その外見や動作が非常にかわいらしいということも挙げられるでしょう。
オスのアダンソンは真っ黒な体に白い帯をまとい、非常に目立つコントラストです。幼生やメスの個体にはこの白い帯はなく、地味な褐色をしていますので、アダンソンの成体の性別を見分けるのは非常に簡単です。
この白い帯、彼らの特徴ある触肢にもしっかりついていて、壁で立ち止まって触肢を動かしている様はまるで黒い応援服にたすきがけ、白い手袋の応援団員といった風情です。
さらに、彼らは非常に視力が発達しています。しかも比較的好奇心が強いので、近くで動くものに対して強く反応します。少し暗い部屋などでパソコンを操作していると、
画面を動くマウスカーソルに興味を示してディスプレイに近寄ってくることもしばしばです。このときの様子がいかにも「興味津々」といった感じで、非常に愛らしいものがあります。
また、胸部の最上部やや後ろ側にも視器を備えており、後ろで動くものに対してはくるっと体の向きをかえて正面から見ようとします。
壁や床を歩くアダンソンを見かけたら後ろから指をそっと近づけてみてください。くるくるっと華麗なステップを見せてくれることでしょう。
さて、こうして見ると、寒さも暑さも関係ない部屋の中でのんびりと暮らしている、うらやましいクモに思えるかもしれませんが、そうでもありません。
画像をみるとわかりますが、このオスは左側の肢が1本欠けています。ネズミやネコといった小動物やより大型のクモ、時には人間から身を守るため、あるいはメスや餌をライバルから勝ち取るために、
こうして肢を失ってしまうこともあるのです。きっとこのオスも、苛酷な生存競争を生き抜いて私の前に姿をみせてくれたのに違いありません。
虫が苦手な人もいるとは思いますが、今度から彼らを見かけたときには、ぜひ優しく見守ってあげてほしいと思います。