クロスズメバチ
クロスズメバチ(学名:Vespula flaviceps)は、その名前からわかる通りあの恐ろしいスズメバチの仲間です。
しかし、他のスズメバチたちが大きな体と凶暴な性格で頻繁に襲いかかってくるのに対して、
クロスズメバチは比較的性格がおとなしく、ちょっかいを出したり巣に触ったりしなければ襲ってくることはありません。
体の大きさは10mm程度と小型で、体の色も他のスズメバチの仲間とはちょっと違った、真っ黒な体をしています。
そのおとなしい性格が災いしてか、時にはオオスズメバチから攻撃を受けて巣が壊滅してしまうこともあります。
オオスズメバチはハチの中で最も強いハチですから、ミツバチもクロスズメバチも同じようなものなのかもしれませんが・・・。
クロスズメバチにはニホンミツバチのようにオオスズメバチやキイロスズメバチを熱殺する能力はありませんから、もし襲撃された場合にはなす術無く全滅するしかありません。
クロスズメバチは雑木林や山の中の地面などに巣を作り、少し山間の場所なら日本中どこででも見られます。
場合によっては木のウロや民家の床下などにも巣を作ります。雑食性で小型の昆虫はもちろん、人間の食べ物にも頻繁に誘引されるため、見かけることが多くあります。
特にタンパク質によく集まるので、外に出してある生ゴミやペットフードの残りなどによくやって来る姿を見かけます。
この時、静かに、刺激しないようにしていれば、肉団子を器用に作って巣に持ち帰る様子が観察できます。
ただし、いくらおとなしいとは言ってもそこはやはりスズメバチ、油断すれば刺されることもありますので、十分に注意が必要です。
缶ジュースなどにたまたま寄ってきているところに気がつかずジュースを飲んでしまい、唇を刺されるのがよくあるパターンです。
なお、一度覚えた餌場は簡単に忘れることが無いようで、何回も繰り返し餌の採集にやってくる様子が観察できます。
それだけにキャンプ地などでは数多く集まってくることがあり、嫌われ者として扱われることもあります。
このハチが人間にとって身近であることの最大の理由は、このように頻繁に見かけるということもさることながら、もっと別の理由があります。
それは、人間にとってこのハチがとても重要な食料になるということです。長野を中心とした中部地方などでは昔からクロスズメバチを貴重なタンパク源として大変珍重してきました。
今でも毎年クロスズメバチの巣の大きさを競う競技会が開かれたり、それに併せて料理大会が開かれたりします。
その時には県外からも多くの観光客が訪れ、大変なにぎわいになるそうです。
調理法も様々で、成虫から幼虫まで佃煮にしたり焼いてみたり煮込んでみたりご飯に混ぜたり・・・と非常に多様です。
果てには生のまま食べることもあるというから驚きです。
これだけ地域に浸透したクロスズメバチは、「ヘボ」「地蜂」「タカブ」「スガレ」などその土地固有の呼び名で呼ばれ、人間の生活に無くてはならないものとして生きてきたのです。
このクロスズメバチは資源として非常に珍重されており、巣の盗掘や乱獲がおこらないよう厳密に管理をしている自治体もあるそうです。
このように、人と虫とのつながりをこれからも大事に持てるようにしていきたいものです。